「病気のこどもに必要なもの―安静そして人間コミュニケーション―」  

国立病院機構仙台医療センター小児科 医長 田澤雄作 先生 

  心の起源―子どもの心理―子どもの発達とメディア

 
   人間は「考える葦」です。言葉を道具にして考えます。原始的な脳は、コン
  ピュータのように、打ち込まれた情報をそのまま吐き出すスポンジのような脳
  ですが、人間の脳は、言葉を道具にして、メタ認知能力や想像する力を獲得
  しました。

   3歳ころの子どもたちも言葉を道具にして、現実世界で「群れて遊び」、人間
  として必要ながまんする力(抑制力)や他社の心を理解する力(感性)を獲得
  していきます。しかし、過剰なテレビなどの映像メディアとの接触は、この人間
  としての土台を形成する時間を奪い、人間としての言葉や感性を十分獲得で
  きない養育環境を与えていないでしょうか。身体は大きくなりますが、幼い心
  の「大人こども」を誕生させていないでしょうか。

   人間は100万年、10万年、1万年の単位で進化してきました。映像メディア
  が登場したのはわずかに50年前です。ここでは、映像メディアの影響を受け
  ていない時代の子どもたちの姿と心を学び直し、現代の映像メディア漬の養
  育環境が人間の進化に値することなのか、観てみることが必要ではないで
  しょうか。


 
 以下は中学生の少年たちに送った手紙です:

  
  朝起きない、頭痛や腹痛(不定愁訴)がある、むかつく・きれる、くよくよ・くどくどしている
   友達はいませんか。そのまま時間が過ぎると、いじめ・不登校・問題行動が生まれることを
   知っていますか。これらの症状や問題行動の主たる原因は、「夜更かし」と「映像メディア」
   への過剰な接触です。映像は「おもしろい」ものですが、考える力、想像する力、抑制する
   力を奪い、脳味噌をカチンカチンにすることは、テレビ時代から分かっていたことです。ゲー
   ムは強烈です。始めると、考える脳は動きませんのでくよくよ・くどくど考えず、気分転換に
   なりますが、5分までが安全です。15分では考える脳が麻痺すること(ゲーム脳)を現代脳
   科学が証明しています。ゲームは、抑制力を奪い興奮性を助長し、いじめや暴れる等の問
   題行動の引き金となります。考える、集中する、判断する、記憶する、抑制する力、気力や
   勇気などの挑戦する力の源は人間らしさの脳(前前頭葉)にありますが、映像メディアはこ
   の脳を麻痺させ、多様な社会的現象(いじめる・あばれる)や反社会的事件が生まれます。
   勉強の成果がでない(学力低下)、スポーツや楽器が上達しない、「おれはだめだ」と思っ
   ている友達はいませんか。能力がないのではなく、夜更かしと映像メディアのために「脳力」
   が低下しているだけのことです。だまされたと思って、1週間の「ノーテレビ・ノーゲーム」に
   挑戦してみて下さい。イライラやムカツキが消えて、周りが明るくなり、爽やかな風が吹いて
   きます。「慢性疲労」という脳の疲労が回復していく時の現象です。